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『上総守が行く!』

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2010年 09月 08日

『伝説/九尾狐(きゅうびのきつね)』

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那須湯本温泉から那須岳に向う途中、山肌がむき出しになり、大きな石がごろごろとした地獄谷のような風景に出会う。
木製の遊歩道を辿り、奥に進むと「殺生岩」が鎮座している。
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「殺生岩」の脇にその謂れが記されている。
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写真では読み辛いので、原文を書き下してみる。

~殺生石の由来~
殺生石は、昭和二十八年一月十二日史跡に指定されました。
昔、中国や印度で美しい女性に化けて世を乱し悪行を重ねていた白面金毛九尾(はくめんこんもうきゅうび)の狐が今から八百年程前の鳥羽天皇の御世に日本に渡来しました。
この妖狐は「玉藻の前(たまものまえ)」と名乗って朝廷に仕え日本の国を亡ぼそうとしましたが、時の陰陽師阿部泰成にその正体を見破られて那須ヶ原へと逃れて来ました。
その後も妖狐は領民や旅人に危害を加えましたので朝廷では三浦介、上総介の両名に命じ遂にこれを退治しました。
ところが、妖狐は毒石となり毒気を放って人畜に害を与えましたのでこれを「殺生石」と呼んで近寄ることを禁じていましたが、会津示現寺の開祖源翁和尚が石にこもる妖狐のうらみを封じましたのでようやく毒気も少なくなったと語りつたえられています。
芭蕉は元禄二年四月十八日奥の細道紀行の途中にこの殺生岩を訪れ 石の香や夏草あかく露あつし と詠んでいます。
注意
殺生岩附近は絶えず硫化水素ガス等が噴気していますので風のない曇天の日は御注意下さい。 
昭和五十二年十月二十五日
那須町

前述の謂れの中では「今から八百年程前の鳥羽天皇の御世に日本に渡来」とあるが、或る書き物では「8世紀、若藻(わかも)という名の少女に化けた九尾狐は、吉備真備の計らいによって、阿倍仲麻呂、鑑真和尚らが乗る遣唐使船に乗り、嵐に遭遇しながらも来日を果たしたといわれている」とある。
更に続けて、「それから360年後(1113年頃か)、北面の武士である坂部行綱(さかべゆきつな)が、子宝に恵まれなかったため、九尾狐が化けたとも知らず、藻女(みずくめ)という捨て子を拾い育て、17年後(1130年頃か)、坂部夫婦に育てられた藻女は18歳で宮中に仕え、玉藻前(たまものまえ)と名を改め、鳥羽上皇の寵愛を受けた。しかし、その後、鳥羽上皇は病を発し、その原因が玉藻前であると発覚し、玉藻前は宮中から逃亡した。 数年後、玉藻は下野国那須ヶ原に現れ、婦女子や旅人を誘拐し喰い殺すなどの暴行を働いたため、鳥羽上皇は白面金毛九尾狐の討伐を命令。8万の軍勢が那須へ集結し、白面金毛九尾狐を捕らえて殺すことに成功する。白面金毛九尾狐は、その直後、巨大な毒石(殺生石)に姿を変えた... 」とある。

伝説とは言え、九尾狐の伝説に吉備真備や遣唐使船が出て来たことに驚いた。
今年5月、「平城遷都1300年祭」の会場で、復元された遣唐使船を見た。
復元とは言え、遣唐使船を間近に見たことでもあり、あの船に乗って若藻という名の少女に姿を変えた九尾狐が渡来したのかとその姿を想像すると、歴史に裏打ちされた伝説というものに大いに興味を惹かれる。

前述の謂れの中で松尾芭蕉についても触れられている。
その句碑と解説の写真も掲載しておこう。
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故事に明るい芭蕉は、この地を訪れ、九尾狐の伝説を思い起こしたことであろう。

殺生岩を過ぎ、那須岳に向う途中で見掛けたのが、冒頭の写真の「白面金毛九尾狐(はくめんこんもうきゅうびのきつね)像」である。
尾は九本、口に巻物をくわえている。
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この巻物には何が綴られているのであろうか。
これまでの悪行の数々なのであろうか、妖術の数々なのであろうか、はたまた、鎮魂のための経文なのであろうか...。

九尾狐の伝説はおどろおどろしきものながら、那須高原観光周遊シャトルバスは九尾(きゅうび)を捩った「キュービー号」と、洒落っ気たっぷりの名前となっている。
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可愛らしいキャラクターに大変身しているのも、九尾狐の妖術のなせる業か...。

フォト:2009年11月9日

by kazusanokami | 2010-09-08 23:52 | 伝説


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